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プログラミングのこととかポエムとか

分散深層ニューラルネットワークの実装アプローチまとめ(2018年6月版)

これは何か

  • 自分が研究テーマとして扱っている分散深層ニューラルネットワークには、「分散」処理の部分において複数のアプローチが存在する
  • このエントリでは、自分の知識の整理のためにこれまで調べたことをまとめておく
  • (2018年6月版) と書いたのは、深層学習業界は変化が激しすぎて半年後には状況が変わっていてこのエントリが役に立たなくなることを想定しているためである(その時はまた新しい版を書こうかなと)

分散深層ニューラルネットワークとは

一般に「深層学習」と呼ばれる機械学習手法においては、隠れ層が多数連なる「深層ニューラルネットワーク」が使用される。
昨今では隠れ層の数を大規模に増加させて学習を行う手法が、主に画像認識の分野で効果を上げており*1、それに伴って訓練に要する時間も増加傾向にある。この問題を解決するために、スループットを向上させるためのアプローチとして分散処理を深層ニューラルネットワークに導入する手法が注目されている。

分散深層ニューラルネットワークでは大きくわけて2つのアプローチ、データ並列分散訓練モデル並列分散訓練 が存在する。以下、それぞれについて解説する。

データ並列分散訓練

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同一のネットワークの複製を複数用意し、それぞれのネットワーク(以下レプリカと呼称)に対して訓練データを適用して並列に訓練を行うアプローチである。 各レプリカは、通常のニューラルネットワークと同様に訓練を行い、個別に勾配を計算して重み行列やフィルタなどのモデルパラメータを更新する。

ここまでは並列でない通常のニューラルネットワークと変わらないが、データ並列分散訓練においては、各レプリカの訓練で得た勾配を、数iterationごと、あるいは毎iterationごとに集約して、平均化したもので各レプリカの勾配を置き変える。これにより、訓練データを分割して並列に訓練を行いつつも、逐次実行で全訓練データを用いて訓練したかのような結果を得ることができる。

この際、レプリカ間で訓練に用いる勾配の「鮮度」が課題となる。常に最新の(つまり鮮度が高い)勾配を用いて訓練を行うには、毎iterationごとにレプリカ間で処理同期を取った上で、勾配を集計し同期する必要がある。しかし、この集計処理がボトルネックとなり、ネットワークのスループット低下につながる。

一方で、勾配の更新頻度を下げすぎると、勾配が同期されるまでは、各レプリカ上のローカルな勾配を用いて訓練が進み、勾配の「鮮度」が劣化する。これにより、レプリカ間のモデルパラメータの差異が大きくなり、損失の収束を遅らせるなどの悪影響をもたらすという問題が生じる。

実際の深層学習フレームワークにおいては、同期処理によるスループット低下を防ぐために、非同期でレプリカ毎に異なるタイミングで勾配を更新する手法を採用しているものもある。以下、同期、非同期それぞれの手法について解説する。

勾配の同期更新

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ニューラルネットワークにおいて、勾配は訓練におけるBackwardフェーズでレイヤー毎に計算される。そして求めた勾配に学習係数をかけた値を使ってモデルパラメータを更新するのが一般的な手法である。

勾配の同期更新においては、モデルパラメータを更新する前に、レプリカ間で同期を取り、各レプリカで求めた勾配の平均値(以下、平均勾配と呼称)を用いて全パラメータを更新する。つまり、各レプリカで計算した勾配をモデルパラメータの更新に用いるのではなく、平均勾配を用いて各レプリカのモデルパラメータを更新する。これにより、常に最新の平均勾配を用いて訓練を行うことができる。

このアプローチは、具体的なプロダクトとしてはChainerMNが採用している。バージョン1.3では、同期更新時に他の処理と一部オーバーラップさせることで同期による処理遅延を低下させる DOUBLE BUFFERING という機能が搭載された。この機能を使うと、一時的に古い勾配のまま訓練を行うワーカーが生じるが、精度には影響のないレベルであるとのことである。 *2

勾配の非同期更新

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非同期に更新を行う場合、各レプリカ間で同期を取らずに平均勾配を求めるため、勾配の集約と平均勾配の計算を行うための別のプロセスが必要である。かつてGoogle社内で使われていたDistBeliefという深層学習フレームワークにおいては、パラメーターサーバという専用プロセスがこの役割を果たしている。Googleのプロダクトとしては後発であるTensorFlowを分散実行させる場合においてもこのアプローチは同じようではある。

非同期更新においては、各レプリカが求めた勾配をパラメーターサーバに送信し、その勾配を用いてパラメータサーバが平均勾配を更新する。各レプリカは次のiterationの訓練を開始する前に、パラメーターサーバから最新の鮮度の高い勾配を取得し、それを用いて訓練を行う。

各レプリカは同期を取らずに平均勾配が更新されるため、レプリカ間で使用している勾配に差が生じている状態が発生する。このことにより、より良い勾配を古い勾配を使った訓練により生じたより劣悪な勾配によって、悪化させてしまう事も考えられる。 このような最新のパラメーターサーバーにある勾配と比べて古い勾配を「陳腐化した勾配(Stale gradient)」と呼ぶ。陳腐化した勾配の影響を緩和するには、学習率を下げる、陳腐化した勾配を定期的に捨てる、ミニバッチサイズを調整する、等が考えられる。*3

モデル並列

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レプリカを作らず、ネットワーク上のパラメータを複数のプロセスに分割し訓練を行う並列化手法。 これにより、例えば前結合ネットワークにおいて、巨大な行列となった重み行列と入力ベクトルとの計算を複数のマシンで分散して実行することで、要求されるマシンスペック要求の低下*4と、並列化による高速化が望める。

一方で、ネットワーク的に分断されたマシンクラスタで実現する場合、各プロセス間のデータ通信が大きなボトルネックになると考えられる。そのため、全結合ネットワークやcNNではスループットが大きく低下する可能性が考えられる。この手法を適用して高速化を行うには各プロセス上での高い密度を高くすることができるネットワークが適していると考えられる。例えば、TensorFlow: Large-Scale Machine Learning on Heterogeneous Distributed Systemsではモデル並列の実装例としてLSTMを挙げている。

自分が論文を調べた限りでは、Apache Spark上に全結合ネットワークやcNNをモデル並列で実際に実装している例*5や、レイヤーごとに複数のマシンに分割し、訓練処理をパイプライン化して並列効率を向上させる実装*6もあるが、まだ実例が少ないアプローチであると考えられる。

2018年6月時点では同期更新・非同期更新どちらが良いのか

様々な条件下で両者のアプローチを比較した2016年の論文Revisiting Distributed Synchronous SGDによると、同期更新の方が非同期更新よりも収束速度も正解精度も高いことを示している。また、訓練を実行するワーカー数を増加させた場合も同期更新の方が収束速度がより効率的にスケールすることを示している。近年の画像コンペにおいても上位入賞者チームにおいて同期型が支持されているという意見もある。*7

よって、非同期型に特化した新しい手法が開発されたら状況は変わる可能性はあるが、2018年6月現在では同期型の方を選択する方が正解である可能性が高い。例えば2017年9月にarXivに投稿されたImageNetの訓練に関する論文、ImageNet Training in Minutesでも、同期型データ並列アプローチを使っていることが明記されている。

まとめ

訓練精度という観点で見ると、データ並列・同期更新が現時点では最も高い精度を得つつ、高いパフォーマンスを発揮できるアプローチだと考えられる。しかし、メモリに乗り切らない大規模なパラメータを扱う場合や、マシンリソースの有効活用という観点では、モデル並列を活用できるシーンもあると考えられる。*8

実際、自分は大規模なパラメータを想定したネットワークにおいてモデル並列訓練を行った場合の性能特性について研究する予定であり、現在c++Blas系ライブラリとMPIで、モデル並列ネットワークを実装している最中である(作るのはとりあえず全結合ネットワークのみ)。自分の研究成果については追ってまた別のエントリで紹介したい。

参考文献

*1:例えばここ数年の画像コンペでかなり使われているcNNの1つであるResNetは、作者らの報告によるとImageNetで152層のネットワーク、CIPHER-10で1202層のネットワークを構築した報告がある

*2:https://chainer.org/general/2018/05/25/chainermn-v1-3.html

*3:https://www.oreilly.co.jp/books/9784873118345/

*4:例えば大規模な行列計算を行うノードとそうでないノードとでGPUの搭載数を変えたりすることで、スペックを要求されない部分には低スペックなマシンを採用することができる

*5:https://arxiv.org/abs/1708.05840

*6:https://arxiv.org/abs/1705.09786

*7:https://logmi.jp/285424

*8:完全に余談だが、過去に非同期処理を多用するマイクロサービスを開発してきた元ウェブアプリケーションエンジニアの感想として、DistBeleifに代表されるパラメータサーバを用いたアーキテクチャの方が馴染みがあるので作ってみたい気持ちにはなる。

outputは最大のinput

outputがないとinputできない

仕事でも勉強でも、日々何かをinput ∈ {調べる, 勉強する, 調査する, 聞いてみる, まとめる, やってみる} しないといけないケースが多い。今は学生なので日々やってることの9割はinputである。

ただ、他の人はどうかは知らないが、自分にはoutputのイメージがないとinputが続かないという問題がある。outputのイメージがないと途中で迷走してやる気がなくなってやめてしまったりすることが多い。

例えば「とりあえずScala勉強してみよう」みたいなのがすごく苦手で、具体的な成果として何をoutputするかが決まってないと続かない。例えば「とりあえずPlay Frameworkのチュートリアルやる」みたいなのがすごく苦手で、大抵途中で飽きてしまう。「今度Play使ったプロダクトの開発するからPlayチュートリアルやってCRUD一式を持つweb appを自分で作って概要を知る」とか、「こういう設計をしたいけど分からないので類似プロダクトのコードを読んで設計を理解して自分のプロダクトに反映させる」みたいな感じでないと続かないタイプである。

なので何も考えずに勉強するだけ、というのもすごく苦手である。そのため、今取ってる講義は全部何らかの応用目的があるものだけに絞っている。とりあえず直近で使わないものは全部「競プロに使えそう」ぐらいなのだが、それでも「ただ単位のため」という目的しかないよりは遥かにマシである。

ささやかでもoutputしながらinputする

自分が普段採用しているスタイルはこれである。*1 以下は研究室で使っているpukiwikiに自分が調べたことをまとめているページである。 基本的に備忘録としてoutputしている感じだが、それ以外にも研究室の定例ミーティングで進捗を報告するときに「XXXについて調べました」というような報告をするときに、当該ページのURLを貼って報告する、という使い方をしている。

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あと今気づいたがMPIとかBLASみたいな、個別の研究に影響しない一般的な内容についてはあとで編集しなおしてQiita辺りに投稿してもいいかもしれない。

同様に論文も要約を書きながら読んでいる。

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論文をまとめるフォーマットはいろいろあるのだが、とりあえず自分の場合は以下のようにまとめている。

  • 3行でまとめると
  • この論文が批判していること
  • この論文の貢献
  • 以下要旨(ここはフォーマット決めてない)

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*1:もちろん具体的なソフトウェアを書くことがoutputの場合もあるが、直近だと具体的なブツが公開できてないので今回は説明を割愛。

大学院修士課程に入学した

tl; dr

  • 会社員辞めて2018年4月から筑波大学のCS専攻の大学院修士課程に入学した
  • 分散深層学習の学習高速化とか大規模inputデータへの対応などに関する研究をする予定
  • がんばるぞい

大学院に入学した

2018年4月から仕事を辞めて筑波大学のシステム工学研究科コンピュータサイエンス専攻の修士課程で大学院生をやっている。
働きながら入学手続きしたり引っ越ししたりと色々やっていたので3月、4月はずっとバタバタしていたのだが、ようやく落ち着いてきたので近況についてまとめておこうと思う。

背景

一応5年ぐらいソフトウェアを書いて仕事をしてきた訳だけど、自分はCSの学位を持ってる訳でもなく、ちゃんとCSの基礎的な勉強したことがなかった。*1

そのせいか、業務要件をコードに落とし込むことはできても、「なぜこのアルゴリズムを使っているこっちのライブラリの方が早いのか」「こういうのを早くするためにはどういう最適化をすべきなのか」というような、技術に特化した課題に直面した時に、何もできないタイミングがちょくちょくあった。

特に、サーバーサイドで動作するバッチのパフォーマンスチューニングの面で、「とりあえずプロセスを増やせばスケールできるように設計したが、本当はもっと実装を最適化して必要なサーバ台数を減らすための工夫ができるのではないか?」ということが疑われるケースにおいて、自分の持っている知識の範囲では何もできないケースが多く、これはレベルの低いエンジニアリングだと思っていた。他にもいくつか似たようなケースに直面したこともあって、ソフトウェアのパフォーマンスをエンジニアリングの観点から改善できないことが自分の壁だと認識するようになった。

この壁を何とかしなければ自分のエンジニアとしての未来はないと思えた。ありとあらゆるものがサービス化される昨今で、今自分が作っているAPIやバッチすらも、GUIでモデルやパイプラインを定義して誰でも作れるようになるという予感もあったので、ウェブアプリケーションからクライアントにjson返すしか能がない自分はいつか職を失うだろうという危機感があった。

この壁を突破し、エンジニアとしての仕事を維持していくために自分に今何が足りないか?と考えると、明らかにインプットが足りていなかった。ソフトウェアというものを現場でのみ学んできた自分にとって、経験したことがない問題に対してほとんど何もできないという弱点があることに気づいた。その弱点が露骨に表れるケースの1つが前述のような大規模データの取り扱いだった。

そのため、5~6年前から、どこかのタイミングで仕事を辞めてインプットに専念する時期を作りたいと考えるようになった。しかし金銭的な余裕がない、卒業後に雇用され得るだけのスキルがない、という2つの理由で躊躇していた。しかし幸いにして、ここ数年でエンジニアとしてはそこそこのレベルになれたので最低限食うには困らないという気持ちになり、かつ貯金がそこそこ貯まったこともあり、やっていきが高まってきたので実行に移すことにした。

大学院という選択肢について

貯金があると言っても仕事を辞めないにこしたことはないので、当初は働きながら夜間に通える大学でCSを勉強しようかなと思っていた。しかし、日本だと夜間コースでCSが勉強できる大学は殆どなく*2、またカリキュラムを見ると基礎的な内容が多く、今の自分にとっては学びが少ないように思えた。通信教育系のカリキュラムもいくつか調べてみたけど、どれも基礎的な内容というかプログラミングのカリキュラムという感じで、どうにもしっくりこなかった。

なので、思い切って仕事を辞めて普通に大学院に行くことにした。
色々調べた結果、今の日本ではちゃんとしたCSを勉強するには昼間に通う大学院に行くしかないと思えた。その事実の是非はともかく、今自分が新しいことを勉強できる環境に身を置くとしたら、大学院で研究することが最も効率的な選択だと思えた。

入学までの経緯

別のブログに院試までの準備とか最近の様子とかをまとまているので、興味があればこちらを参照してほしい。
今後も学生生活ネタや研究ネタはこちらのブログに書いていく予定である。

serihiro-graduate-school.hatenadiary.jp

大学院で何を研究するのか

配属はHPCS研究室というHPC関連の技術要素を扱う研究室で、もともと興味があったMapReduce on HPCでの性能改善に関するネタを探そうと思っていた。しかし、MapReduceはあまりにレッドオーシャンで論文のネタになりにくそうという話になり、深層学習 on MapReduce(もしくはそれに類する分散環境)はどうかという話となった。

深層学習については以前に一度本を読んで写経した *3ぐらいの知識しかなく、TensorFlowやChainerもMNISTチュートリアルをやったぐらいの経験しかない。しかし、せっかく時間を取って研究するならやったことがない事の方が学びが多かろうということもあるので今は深層学習について論文を読んで知見をinputしている。同じ研究室内には深層学習を扱っている人はいないので何とか一人で頑張ってみる次第である。

最近の様子

大体、朝8時から19時か20時ぐらいまでは大学内にいる感じである。*4

M1の間に必要な単位をできるだけ稼いだ方がよさそうなので、5日間の平日のうち4日は何らかの講義を1日に1,2個履修している。CS専攻のカリキュラムページ はMkDocsで書かれていて読みやすくて良い。
今取っている講義は、自分の研究に関連する分散処理に関するものや、自分が単純に興味がある遺伝的アルゴリズムや数理最適化に関する理論などである。他にも、インテルの中の人が来て最近のインテルのCPUアーキテクチャに関する説明をしてくれる講義なんかも取っている。色々あって楽しい。

講義以外の時間は研究室にいて、今月は研究テーマを決めるための関連研究の調査をしている。まずは基礎的な所からということで、MapReduceや分散深層学習に関連するものを中心に読んでおり、や英語の論文を読んで要約する作業も最初はかなり時間がかかったが、2,3本読み切った辺りから段々と早くなってきた気がする。あと深層学習について復習するために ゼロから作るDeepLearningを最初から写経しながら読み直した。*5

それ以外だと、大学の図書館に行ってみたら大量に技術書があって、何時間でもいられそうな環境であるということを発見したので帰宅する前とかに図書館に寄って漁ってたりする。この土日も図書館に行って技術書を読んでいた。詳解LinuxカーネルとかTypes And Programming Languagesとかドラゴンブックとかの、普通に買うと余裕で7000円とかする本がタダで読めるのは大変ありがたい。大学にいる間にできるだけ読んでおきたい。

お金の話

「無職なのにお金はどうするの?」という話をよく聞かれるのだが、率直に答えると、必要な予算を計算したところ、自分の貯金を全部使っても若干足りなかったので、足りない分は親からの借金でカバーしている。
大学の入学金・授業料*6は国立なので大した額ではないのだが、2年間の住民税*7国民年金・保険*8・生活費が、必要予算の大半を占めている。2年間は旅行はおろか、技術系カンファレンスに日帰りで行くことも厳しくなりそうだが致し方ない。改めて自分が生きていくのに必要な予算を計算することで、ただ生きているだけで物凄くお金がかかるということを実感できる良い機会になった。卒業後は、借りた金を早く返せるように、また貯蓄を増やしなおすべく、前職以上に稼げるようになろうと決意した。

卒業後の話

もちろん就職はするのだが、どの企業を受けるかまでは決めていない。
できれば分散システムを利用したプロダクト開発に関われるソフトウェアエンジニアとしてのポジションに就きたいと思うが、具体的な就職活動的なものは来年以降にやることとし、今年は研究に専念したいと考えている。また、在学中のインターンについても行ってみたい会社がいくつかあるので、その辺りにも挑戦してみようと思う。

*1:独学でやった勉強と言えばパタヘネを読んだぐらいか。

*2:例えば東京電機大学には夜間に学べるコースがあるが

*3:その時の話は別エントリに書いた https://serihiro.hatenablog.com/entry/2016/12/22/000000

*4:前職時代がこんな感じだったのでそれをそのまま引き継いでいる感じ

*5:余談だが、最初の方の版は誤植が多いので、古い版を持っている場合はgithubにあるerrataを見ながら読んだ方がいい

*6:実際の額は http://www.tsukuba.ac.jp/admission/graduate/tuition.html を参照

*7:特にフルタイムで働いていた2017年度の所得で計算される2018年度分がとてもとても痛い

*8:1年目は関東ITSの任意継続の方が安かったのでそちらを使い、2年目からは国民保険の方が安いのでそっちに切り替える

どうやったら成長できますか的な質問にうまく答えるのが苦手だ

これまで散々意識高いポエムをこのブログに書いてきたのに、具体的に「こうすれば成長できるぜ」という答えが、うまく言葉にできないでいる。

大体、自分自身は成長したいと思ったことはない。
ただやりたいことが目の前に転がっていて、それを実現するためにうにゃうにゃ悩みながらやってきたら、結果として「とある時点の自分と比べると成長したな」と言える程度にはなっている、という程度。そもそも成長というものが良く分かっていない。

例えば、勉強すれば成長できるのだろうか。自分の場合、勉強のための勉強が大の苦手だ。
目的が分からず、その上興味も持てない勉強をするのがすさまじく苦手だ。なので勉強についてもうまく説明できない。残念。

基本的に、勉強は必要が生じたらやる、いわゆる「遅延評価勉強スタイル」を採用している。以下のサイトで紹介されているものに近い方法だと思う。大体これでうまく行っている。

d.hatena.ne.jp

以前高校数学を勉強したのも、古典機械学習を勉強しようとしたら数式を見て脳が処理できずにフリーズしてしまったので、スムーズに読むために勉強した程度である。

serihiro.hatenablog.com

もし、勉強というものが成長につながると仮定するならば、勉強の機会を沢山つくればいい、ということになるという仮説が立てられる。
つまり、自分が勉強が必要だと感じる状態を作り続ければいいのではないだろうか。

例えば、月並みだが、やったことのないことをやってみる。そうすれば、知らないことやできないことにたくさん直面するだろうから、勉強の必要性が生じ、勉強することになるだろう。

このブログでは今まではそんな感じの論調でエントリを書いてきたが、こういう話をリアルですると、コメントとして「なにをすればいいかわからない」「やりたいことからやるとしても、やりたいことが見つからない」と言われることが多い。じゃあやらなければ?と言いたいところだが、それだと成長できないというめんどくさいデッドロックになってしまう。

「成長したいがやりたいことはない」という状態は解消するのがとてつもなく難しい。じゃあ成長しなきゃいいじゃん、と回答したくても「成長しないといけない気はしている」という話になってしまうのであまり雑なことも言えない。

こういうことに対する回答としては、以下のようなエントリを自分は過去に書いている。

serihiro.hatenablog.com

serihiro.hatenablog.com

serihiro.hatenablog.com

しかし、どれも結局は「何となくやりたいことがある」という前提の回答になってしまている気がしている。

実際、自分は今、少なくとも30代のうちに達成したい目標があり、それを達成するために1年後、2年後はこうなっていたい、というロードマップがある。*1だから、そのロードマップの途中に設定されたマイルストーンを達成するためには、今後1年はこういうことを勉強しないといけないなぁ、というのも自然と見えてくるので、今時点の状態に関して言えば、自分がすべきことは明確に見えている。

だから、結局は、そうじゃない人のことなんて良く分からない、というのが本音である。
やりたいことがあるから今その環境にいる、というのが自分の中では当然になってしまっている。仮に、今はやりたいことができる環境におらず、やりたいことができる環境が明確に分かっているのなら、環境を変えられるように動く。そういう環境の有無が分からなければ、環境はそのままで自分を変える。それが自分のスタイルで、それ以外のスタイルで生きている人のことは正直わからない。それが自分という人間の限界である。
特に仕事に関してはその傾向が強い。そうでなければ、一番安定していたであろう新卒で入ったSIerに今でもいた気がする。趣味に関しても、かつてはマンドリンオーケストラに所属していたが、それよりもやっぱ独奏をメインでやりたいと思うようになってマンドリンオケ活動を全て辞めて、ギター教室に通うようになったりした。これもある種、やりたいことをやるための環境の変化ともいえる気がする。

こんな調子なので、やりたいことがない、けど成長したい、という人に対してアドバイスできることなんて全くないんだなぁということに最近気づいた。やりたいことがあるがどういうアプローチで攻めればいいか分からないのでブレストの相手になってくれ、というのであれば対応できそうなものだが、どうすればいいですか、と聞かれても「いや私も分からないんですよ」と言うしかない気がしている。

*1:30代というのは大きくピボットするための体力と精神力を維持できるのは30代が限度じゃないかと周りの30代を見ていて思った、という程度の根拠

RubyでMapReduceを実装している

去年の12月ぐらいからRubyMapReduce*1を実装している。
一応、ちゃんと複数のマシンで分散処理ができるところまで実装できたので、今の進捗をまとめておく。

github.com

最初は分散処理で動作するものではなく、1台のマシンでマルチスレッドで動作する疑似分散処理の実装を作ってMapReduceアルゴリズムの理解を深めるのが目的だったが、せっかくなのでちゃんと複数台のマシンで動作するものを作ることにしてみた。

概要

システム全体のアーキテクチャは以下の通り。

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とは言っても、実用が目的ではないので以下の制約がある(Combinerはそのうち実装するかも)

  1. Maptaskは1台のnodeで動作し、Reduectaskは空いているJobWorkerの分だけshuffleして並列に動作する
  2. Combiner未対応なのでMaptaskのoutputをそのままshuffleする
  3. shuffleはkeyのhash値を空きJobWorkerの数で割った余りを使う単純なhashパーティションのみ
  4. MapReduceのinput/output/処理途中の中間データは全てS3に保管し、データのローカリティは一切考慮しない
  5. 途中で処理が失敗してもリカバリする手段はない

ローカルで動作させている様子をキャプチャしてみたが、なんとなくこれで伝わるだろうか。
S3の代わりにminio*2をローカルで実行し、JobTrackerが1host, JobWorkerが3host起動しており、maptaskが1hostで実行され、その後, reduectaskが2hostで実行されている様子である。

www.youtube.com

使い方

クラスタの起動の仕方はREADMEに書いたのでこちらを参考していただきたい。 Dockerイメージも用意したので、めんどくさい人は docker-compose up 一発でクラスタを起動できる。

ジョブは、MapタスクとReduceタスクをそれぞれ別クラスで用意すればよい。 なお、自分で用意するのがめんどくさい人向けにCLIにサンプルが入っており、手順だけまとめると、docker-compose upで起動した場合は以下のようにすればWordCountが動かせる。

$ docker-compose exec job_tracker bundle exec simple_map_reduce generate_lorem_text_data --upload=true
$ docker-compose exec job_tracker bundle exec simple_map_reduce execute_word_count

ちなみにここで実行しているWordCountのJobは以下のようなコードである。*3

class WordCount
  def map(input_data, output_io)
    input_data.split(' ').each do |raw_word|
      word = raw_word.strip
      next if word.empty?
      word.delete!('_=,.[]()#\'"-=~|&%')
      word.downcase!

      output_io.puts({ key: word, value: 1 }.to_json)
    end
  end
end
require 'json'
class WordCount
  def reduce(input_io, output_io)
    output = Hash.new(0)
    count = 0
    input_io.each_line(chomp: true, rs: "\n") do |line|
      input = JSON.parse(line, symbolize_names: true)
      output[input[:key]] += input[:value]
      count += 1
      if count % 100 == 0
        puts "current count: #{count}"
      end
    end

    output.each do |key, value|
      output_io.puts(JSON.generate(Hash[key, value]))
    end
  end
end

これをどうやってJobTrackerに渡して実行しているかというと、ソースコードをStringとしてJobTrackerにPOSTし、temporaryなクラスを生成した上でそのクラス内クラスとしてclass_evalして定義する、という力技により実現されている。*4
Hadoopだとjobをjarとして生成してjarをそのままNameNodeに渡すようになっているが、スクリプト言語である以上こうするしか思いつかなかった。。

使ったライブラリなど

sinatra

実はsinatra*5をちゃんと使ったことがなかったので、勉強を兼ねて使ってみた。
sinatra自体は歴史あるプロダクトなので今さら特に語ることもないのだが、1クラス1アプリの単位で実装できるのが結構都合がよかった。今回作った実装ではデータの永続化を一切しておらず、sinatraアプリとして実装したクラスのクラスインスタンス変数にすべて突っ込む力技*6を採用しているのだが、データストアとしての役割も兼任させる上では1クラス1アプリという単位は管理上都合がよかった。

また、rubyのクラスとしてweb appをそのまま実装して起動できるので、rubyからふつうに起動できるのも便利だと思った。railsだと bundle exec rails s みたいな感じで、普通はシェルスクリプトなどから実行するしか手段がないのだが、sinatrarubyスクリプトとして実行する以外の起動手段を持っている。

例えば今回作ったMapReduce実装には管理用のCLIを添付したのだが、このCLIでJobTrackerを起動する部分は以下のように実装している。*7

SimpleMapReduce::Server::JobWorker.run!(port: config.server_port, bind: '0.0.0.0') do
  SimpleMapReduce::Server::JobWorker.setup_worker
end

run! で起動できるのは割と周知された方法だと思うが、さらにblockを渡すことで起動前に処理を独自のcallbackを追加できる。これはドキュメントを調べても見当たらず、結局sinatraのソースを眺めていて見つけた。*8

また、同様にソースを見ていて発見した例として、sinatraアプリを終了するときに実行されるSinatra::Base.quit! *9をOverrideすることで、sinatraアプリを終了する時にもcallbackを挟むことができるので、WebRickを終了させる前にWorkerを終了させるのに利用している。*10

# @override
def quit!
  @keep_polling_workers = false
  @polling_workers_thread.kill
  job_manager.shutdown_workers!
  super
end

MessagePack

Web APIへデータを渡すときのserializeはいつものようにJSONでいいかなとも思ったが、せっかくなのでMessagePack*11を使ってみた。
独自にTypeを定義すれば自前のクラスもserialize/deserializeできるようだが*12、今回はとりあえずHashとして各種プロパティの値をdumpしたデータをserializeしているだけである。いずれ直接JobやTaskをserialize/deserializeできるようにしてみるのも面白いかもしれない。

Worker Threadの管理

Threadで非同期実行するWorkerを管理をするために別のgemを実装した。

github.com

中身を見てもらえば分かるがSidekiq*13っぽいI/Fで指定したクラスをjobとしてキューイングして、Thread poolに入ってるThread群で並列に実行できる、という程度のものである。JavaのConcurrency UtilにあるExecutorServiceみたいなものの超簡易版ぐらいに思ってもらえれば幸いである。

Sidekiq等のJobQueueと異なる点として、外部のデータストレージをキューストアとして使っていない。漢らしいオンメモリキューストアである。もちろんjobの優先度も管理していない。 jobをEnqueueする部分はこんな感じである。*14

module Rasteira
  module EmbedWorker
    # Manager class that manages the thread pool and executes jobs.
    class Manager
      attr_reader :job_pool

      def initialize
        @job_pool = []
        @thread_pool = []
        @mutex = Mutex.new
      end

      # 省略

      def enqueue_job!(worker_name, options = {})
        @mutex.synchronize do
          @job_pool << ::Rasteira::Core::Job.new(worker_name, options)
        end
      end

データストアが絡まないとここまで実装をシンプルにできるんだなぁと感心した。逆に、普段どれだけ外部システムとの連携に神経をすり減らしているかが良く分かる。

この漢らしい実装のおかげで、JobTrackerやJobWorkerのsinatraアプリとメモリ空間を共有することができるため、jobやworkerなどのオブジェクトの参照をそのまま渡すことができる。
なので、workerからjobやworkerなどのオブジェクトを直接変更することができる。セキュリティもへったくれもないのだが、実用を考えていないのでセキュリティには一旦目をつむりたい。*15

感想

MapReduceそのものの実装は簡単だったのが、その周辺のworker, job, taskを分散環境で管理するのが難しく、分散処理に関する実装に殆どの工数が取られてしまった。
分散処理で動作するプロダクトを作る際に本質的でない実装にものすごく工数がかかるのはGoogleの論文にも書いてあった通りで、まさに身をもって再試をした気分である。

しかし、お陰で何となくHadoopなどの分散処理フレームワークが裏で何をやってくれていて、その恩恵によってどれだけ本質的な処理にだけ集中できるようになったのかが少しは理解できたと思う。 今回作った実装についてはまだいろいろと実験しがいがありそうなので、今後も時間を見てアップデートしていく予定である。 今は分散処理や大規模データ処理の高速化のアルゴリズムについて興味があるので、今後も実装を通じて学んでいきたい所存。

技術で生きていきたいから信じてコードを書く

tl;dr

  • エンジニアとしてどういう風に生き残ればよいかという問いについてずっと考えてきた。
  • でもようやく今後の自分のキャリアをこうしたい!というのが固まってきたよ。
  • それをやるためにコードを書き続けるよ。

エンジニアきのこ話

他の人も良く考えているのか、身近なエンジニアと飲みに行くと大体このきのこ話になるし、その手のネット記事は月に1回ぐらいは見る。

例えば今年だとこういう記事を読んだ。

f-shin.net

srknr.hatenablog.com

エンジニア 生存戦略 とかでおググりになってほしい。大量に出てくる。 媒体も法人メディア、個人ブログ、Qiitaと幅広い。それだけみんな関心があるんだろうな。

自分も長いこと次のキャリアを色々と考えてきた。
現場を離れてピープルマネジメントをする、プロダクト自体のマネジメント方面にシフトするなど、少なくとも今のwebアプリケーションエンジニアのままではいられないと思っていた。 また、プログラミングを職業にしているせいで発生するつらみが大きくなりすぎて、エンジニアのポジションをそもそも辞めようと思ったことも何度かある。1

ここ数年、20代後半になってからずっと将来の結構キャリアに迷ってきたが、色々痛い目を見たり考えたり人の話を聞いたりする中で、ようやくやりたいことがはっきりしてきた。 自分は今後これをやって飯を食っていくんだ、と思えるものがようやく固まってきた。これが2016年後半の出来事。
それからはずっと、そのキャリアを実現するためだけに動いてきた。 そして、来年からはそのキャリアを実現するために実際にいくつかアクションを起こしていく。

で、何やるの

それをどうやって達成するかだが、自分が目的を達成するために足りない技術を勉強し、その上でコードを書き続けるしかないと考えている。 コードを書くことだけが云々、もう歳なんだから云々、という声も聞こえてくるし自分も直接言われたことがある。でも結局自分で手を動かして実感を得ながらでないと、どんな分野でもコンピュータの世界においては「わかった」ことにならないと思っている。だからこれはもうこの業界にいる以上、一生続けたい。

最近はrailsエンジニアとして仕事をする一方で、プライベートでは全然仕事で使わないような技術分野を勉強したりコードを書いたりしている。例えばHadoopのソースを読んだり、量子コンピュータスパコンや分散処理についての本を読んだり、自分でMapReduceを実装したりしている。2

その分野が何なのかは、2018年の自分のアウトプットを見てももらえれば誰から見ても分かるようにしていきたい。それが2018年の目標だ。


  1. プログラミングは好きだが仕事としてはつらい、という感じのやつ。なのでこういうこと も積極的に意識するようになった

  2. これについてはソースを公開するタイミングでこのブログで詳細を書きたいと思う

webサービス業界で働き始めて丸5年が経とうとしている

いわゆる「webサービス業界」というものに入ってから、今年の12月で丸5年が経とうとしている。

一般的に使われる「web業界」(もう死語かな)ではなく「webサービス業界」と書いたのは、「作って別の組織に納品して終わりというスタイルの開発だけではない開発をするようになってから5年が経とうとしている」という意味で区別したかったので、本エントリではこのように書くことにする。因みにそれ以前はSIerと受託開発をしていた。

この5年間はどんな5年間だったかを一度ここらで振り返っておきたい。

最初の3年間

完全に自分の力を伸ばすための期間だった。 当初の所感とかは以下のエントリに書いている。

serihiro.hatenablog.com

serihiro.hatenablog.com

この業界でやりたいことも将来やりたいことも何も考えずに、ひたすら自分のスキルを伸ばして、業界内での存在感を出そうとしていたように思う。とにかくエンジニアとして周りと比べて劣っている自分を何とかする、ということしか眼中になかった。

当時具体的にやったことを書いていく。

まず与えらえた仕事はかなり必死こいてやった。スキルも大したことがなかったので「必死こかざるを得なかった」というのが正解かもしれないが、とにかく早く、正確に、与えられたタスクをひたすら消化することに集中していたと思う。

夜9時に退社するのも普通に感じてたのもこの頃だった。自宅で勉強することよりも職場で学べることの方が圧倒的に多かったので、職場で大量に仕事をこなすことが一番の近道だと信じていた。実際、自分よりも何年もキャリアが長くスキルも高い先輩に囲まれて、とにかく自分が頑張れば頑張るほど自分の成長が見えて楽しい時期だったし、仕事もそれなりに上手くいっていたように思う。

この間、仕事で使う言語もjavarubyの2つの言語を経験したことで、静的型付け言語と動的型付け言語の両方のpros/consを学ぶことができた。どちらもOOP言語だったことで移行がスムーズだったように思う。その前のphpjavaが結構大変だったのに対して。

仕事以外の活動として、勉強会を主催するようになった。渋谷javaという、今でも別の方による運営が続いてる勉強会を立ち上げて、自分で運営して、ついでに自分も発表するというようなことをしていた。

ただ、当時はjavaを極めてjavaで一生食ってこうなんていう気持ちはあまりなかったように思う。自分自身が色んな勉強会に出るようになったことで感じたミュニティの力の大きさに感動して、とにかくコミュニティに貢献したいという気持ちと、自分のプレゼンスを上げて会社外でも名前を知られる存在になりたいという感じの自己承認欲求が主なモチベーションだった。 それを実現するためのテーマとして、当時仕事で使っていたjavaを選んだという感じだった。実際、このころ何かjavaについて取り立てて詳しい訳でもなく、OSSのプロダクトも作っていなかったから、発表した内容はせいぜい自分が見つけた便利なライブラリ紹介をする程度に留まっていた。それが限界だった時代だった。

今でこそembulk、digdagといった著名なjava製のツールをソースレベルで仕様を調べてそれなりに使っているので、もう少し気の利いた話を出来そうなものである。しかし、当時の自分にとって、javaはwebアプリケーションを書くための言語という位置づけでしかなかった。そもそもwebアプリケーションを書くのが自分が出来る精いっぱいのことだったし、それ以外の世界を知らなかった。

次の2年間

10年後ぐらいにこの2年間を振り返った時、大きなターニングポイントになった2年間だったと自分が評価するであろう期間だと思っている。

この2年間で大きく変わったのは自分への評価だ。 それまでは、最初の3年間が終わるその時まで、自分は同業者に対してものすごい劣等感を感じ続けていた。そしてそれをモチベーションに仕事をしてきた節があった。

しかし、この2年間でその劣等感はだいぶ払拭されたように感じる。単なる思い込みや驕りかもしれないが、一応webアプリケーションを書いてる人間としては、そこそこ出来る方の側に属するのではないか、と感じるようになった。

転職して仕事のスタイルが大きく変わったことも大きい。以前、以下のエントリにも書いたが、セルフマネジメントをしなければならない領域が最初の3年間と比べて大幅に増えた。

serihiro.hatenablog.com

具体的な指示もない中で自分で会社にとって何が必要か、今何をすべきかを必死に考えて実践しなければならなくなった。恐らく世の中のスタートアップと呼ばれる企業はどこもそのような要素を多かれ少なかれ含んでいるのだと思うが、自分が入った会社もまさにそうだった。

この環境で鍛えられたのは単純な技術的なスキルというよりは、何をすべきかを自分で考え出すスキルだったと思う。

プロジェクトにアサインされている時は、APIメンテナとして要件をまとめて設計をし実装とテストをするというそれまでと変わらない仕事もした。しかし、それ以外に、今プロジェクトの中で自分が何をしなければならないか、何をすればプロジェクトがうまく進むのか、ということを考えて行動する必要が出てきた。

特に人を動かすという部分ではそうだった。エンジニア出身でない人に何がどういう理由で必要かを説明し、説得し、動いてもらう。そういう技能が要求される画面が増えた。 それまでは、ほぼエンジニアとデザイナ(フロントエンドの実装も兼任する)とマネージャー(エンジニア出身の)とだけコミュニケーションが取れればよく、コミュニケーションに悩んだことはあまりなかった。コンテキストが重なる領域が多いので、ある程度ツーカーで会話ができていた。 しかし、エンジニアリングの知識が無いが、重要なドメイン知識を持つメンバーと仕事をするケースが増えた。そのため、そういったメンバーとのコミュニケーションを行い、上手くその人達と協業するためのコミュニケーションを円滑に行うというタスクが大幅に増えたと言える。 今まで単にそういうことが必要なかったのは他の人がやってくれていたおかげだが、組織が変わってそれを自分でやる必要が出た。最初はうまくいかない面も多かったが、最近はそういうコミュニケーションミスに起因して発生するトラブルを先回りして回避するためのプロジェクト進行上のテクニックがかなり身に付いたように思う。

プロジェクトにアサインされていない時は、今メンテしているプロダクトに何が必要かを考えてタスクを自ら生み出す必要があった。 これは逆にこれまでの貯金が生きた部分で、驚くほど上手くハマった事例をいくつか作ることができた。今までのプロジェクトでやってよかったこと、悪かったことに関する知見をフルに活かすことができた。

今の職場での入社直後に集中的にこれまでの知見を用いて開発環境をもろもろいじったのだが、何をやったかは以下のエントリに書いた。

serihiro.hatenablog.com

プロダクトの設計面では、自分が以前から構想していたrailsにおける非同期jobを管理するためのアーキテクチャを導入して実装したりもした。サブシステムを丸々一つ一人で実装するようなこともあって、そういう時はこれまでやりたくてもやれなかったようなアイデアを堂々と導入することができた。

それ以外の面では属人化していたスキルや知識をパブリックにすることに力を注いだ(誰も気にしていない領域だったので勝手にやった)。

自分が入るまで特定のエンジニアにしか出来なかったことを管理画面に移植してセールスやサポートチームでも出来るようにしたり、社内コミュニケーション用のツールとして使っている esa.io#知見 というタグをつけて、こまめに社内向けの知見(歴史的経緯で分かりづらくなっている機能の仕様だとか分かりづらいモデリングに関する解説だとか)書き残したりしている。

特に、特定のプロダクトや機能に関する解説資料は、 #徹底解説シリーズ というタグをつけてかなりの長文で解説記事を書いたりもした。読まれているものもそうでないものもあるが、主に自分が仕様を思い出したり、他のエンジニアに仕様を説明したりするのに役立っている。

これまで書いた #徹底解説シリーズ で一番社内の反応が多かったのは、APIが参照しているDBのモデルに関する解説記事だった。 これは、主要なモデルに関するドメインレベルでの解説と、それらのモデルを検索するための用途別のSQL例をセットで記載したもので、非エンジニアにもSQLを覚えれば自由にデータを参照できるようになってもらうことが目的だった。まぁ実際にSQLを書いてくれる人が増えた訳ではなく、結局エンジニアやデータサイエンティストがSQLを書いてデータをBigQueryから取り出す状態は変わらなかったが、それでもこれから入ってくるエンジニアやデータサイエンティストのためのオンボーディング資料として役に立つんじゃないだろうか。

仕事以外の部分ではいくつかのgemをリリースした。殆どがrailsに関連するものだが、例えばflatten_routesは自分が趣味で作ってたrails productで必要だったので作ったものだが、実際にこれは似たようなgemを見たことがないという点ではそれなりに意味のあるgemだったのではないかと思っている。あとshoryuken, google-auth-library-ruby, ruby-openid といったgemにcontributeすることもできた。

github.com

あと開発手法に関するLTを社外で2回行った。どちらも大した話はしてないが、両者ともその後の懇親会ではそれなりに好意的なコメントを直接いただいた。

speakerdeck.com

speakerdeck.com

こういった経験で得たいくつかの成功体験を通して、自分自身はまぁまぁ出来る方のエンジニアだなとうっすらと感じるようになった。(もちろんやらかした事例もある)

現職の他のエンジニアも優秀なメンバーが多いと感じるが、彼らとうまく連携して仕事ができているという点と、それまで出来ていなかったことをそれなりに達成できたという点で自分もまぁそれなりにできる方になっていたのではないかと感じる。特にrailsによるweb appの開発という面において技術面では大きな課題を感じたことは殆どなかった。どちらかと言えば課題を感じたのは、上述したプロジェクトの進め方をいかに円滑にするかという部分だった。

新しく興味を持ったもの

一方で、ここ2年間で技術的にはwebアプリケーション以外の領域に目が向くようになった。

今何か作りたいものがありますか?と聞かれたら自分はBigQueryのような大規模データ分析基盤、もしくはそのBackEndで動作する分散job workerか分散File Systemと答える。
きっかけは今の会社に入ってから使うようになったBigQueryで、これは本当に革新的だと思った。

BigQueryは使う人から見たらただのRDBMSじゃん、と思うかもしれない。しかし、MySQLOracleを仕事で使ってきた人なら分かると思うが、比べ物にならないぐらいのreadパフォーマンスを何のチューニングもしなくても出せるという一点で、RDBMSとは全く異なる存在である。 実際自分も使ってみるまではそのパフォーマンスに懐疑的だったが、数千万行から数億行のレコードをフルスキャンしなければ実現できないような集計クエリが20秒程度で返ってきた時は度肝を抜かれた。また、日々どれだけレコードが増えてもパフォーマンスが殆ど劣化しない。雑にBQにdatasetとテーブルを作ってembulkで流し込みさえすれば、後は自由にクエリを書いてデータをシュッと取り出せる。

この体験は使ってみないと分からないと思うが、入社して初めてnginxのログをBQで検索したときは本当に革新的だと思った。こういうものこそが自分がそれまで必要としていたものだった。

これまで、著名なサービスを除けば世の中のサービス開発はデータを軽視されていたと個人的に感じていたのだけど、それは大規模なデータを取り扱うためのDWHのようななにがしかを「サービスが稼働し始めた後から」作るイニシャルコストが無視できないほど大きかったからだと考えている。大企業はともかく、スタートアップとしてはそのような大型投資を簡単にできない状況が多いと思われる。

しかしBigQueryは、PaaSとしては高い方だと思ったけど、テーブルを作ってデータをinsertするだけなら大した額はかからない。しかも、すぐに始められるから、どれぐらいの投資が必要か判断できなくてもスモールスタートで「とりあえずこのテーブルだけ分析できるか検証してから決めたい」という時にすぐに判断ができる。本番のDBに投げたら絶対返ってこないようなクエリがすぐに打てる。これがビジネスにどれだけの影響を与えるか。

というような具合に、ビジネス面でのインパクトも感じたが、一方でそもそもどういう風に実装されているのかという点に自分は興味を持った。
分散データ処理と言えばおなじみMapReduceだが、そもそも自分はMapReduceを使ったこともなければ使いどころについても検討したことがない。まずはこっからだ、ということで今年に入ってからMapReduceのオリジナルの論文や、Hadoopの高速化に関する論文を読んだり、ここ数年のビッグデータの処理基盤に関する傾向を調べたりした。 分かったことは、今の時代ではHadoopがかつて抱えていた問題(それこそ論文で議論されていたような)を解決するようなossが増加し(spark, kuduなど)、MapReduceはオワコンみたいな話をえらい人がパブリックな場でするようになって、もはや枯れた技術となってきているということが分かった。が、大規模なデータを処理するためのアルゴリズムとしては優れており、それを支えるためのストレージ/NWの技術は着実に進歩しているし、個人的にはまだ研究したいと思える技術ではある(まぁproductionで使ったことないし)。

次の5年間

今までは自分の劣等感をモチベーションとした「成長」だけを意識して仕事をしてきたが、これからは作りたいものを作るための技術習得にフォーカスして、作りたいものをやるために仕事をしようと思う。ビジネスのための手段としてwebアプリケーションを作るという意識が強かったが、単純に自分が作りたいと思うものに技術をつぎ込んだ結果、それがビジネスになり自分のお賃金になる。そういうポジションを目指したいと思う。